京都観世会9月例会
Monthly Performances (September)

公演日時:2019/09/22(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(能) 綿木        浅井通昭
(狂言)舎弟        童司改メ 茂山千之丞
(能) 三井寺 無俳之伝  片山九郎右衛門
(能) 天鼓  弄鼓之舞  浦田保浩
入場料:
前売券(1階当日指定席)¥6,000
当日券(1階当日指定席)¥6,500
学生券(2階自由席)  ¥3,000

演目解説

錦木 にしきぎ
 諸国一見の僧が陸奥の狭布の里に着くと、当地の名物である錦木と細布を売る、夫婦と思われる男女に出会う。僧がそれらの謂われを尋ねると、男は、思う女性の家の門に錦木を立てる風習を語る。そして女が錦木を取り入れなかったために、三年間も立て続けた男のことを述べ、その男の古墳である錦塚に僧を案内と、二人は塚の中へと消えて行く。                           〈中入〉
 僧が二人の供養のために読経していると、男女の亡霊が現れ、三年間実らなかった恋の恨みを述べる。しかしながら懺悔を終えた男の亡霊は、「錦木は千束になりぬ、今こそは人に知られぬ閨の内見め」と言って喜びの舞を舞う。僧の回向によって執心を解脱した男は、今宵初めて女と盃を交わしたのだった。ただその喜びも所詮は夢の中のこと。いつしか夜が明けはじめると、亡霊たちの姿は野中の露と消え、風の音だけが残るのみであった。
 錦木伝説を中心に、さまざまな和歌を多用して作られた、美しくもはかない恋物語。一転、前述の「錦木は千束に……」の歌をきっかけに場面転換し、喜びの舞へと変わる構造がこの作者にしては、唐突である。陸奥人の心の素朴な美しさに、機を織る音や虫の音が相俟って、秋の野趣的な詩感を盛っている。

三井寺 無俳之伝 みいでら おかしなしのでん
 我が子が行方不明になった母が、清水寺に参詣し、子との再会を祈る。すると夢の中で清水観音の、子に会いたければ三井寺へ行けというお告げを受け、母は三井寺へと急ぐ。                              〈中入〉
 一方、三井寺では住僧が近ごろ弟子にした幼い子を伴なって、中秋の名月の夜、庭に出て月見をしている。そこに母が山を越え、月の照らす琵琶湖を望む三井寺へとやってくる。能力が撞く鐘の音を聴き、母は自らも撞こうとすると僧に咎められる。母は中国の故事を引き「許し給へ」と鐘を撞き、月のもと鐘尽くしを語る。幼い子こそ実は狂女(母)の捜し求める子千満であった。僧が子に頼まれて女の故郷を尋ねると、女は駿河国清見ケ関の者と答える。やがて親子は再会を果たす。子は人商人にさらわれて、今この寺にあるのだった。親子は伴って故郷へ帰り、富貴の家となった。
 月の名曲で、春・花の《桜川》に対し、秋・月の《三井寺》といわれる。「鐘之段」に続く〔クリ〕〔サシ〕〔クセ〕の「鐘尽くし」は名文で作曲も面白く、聞き所・聞かせ所である。〔上ゲハ〕以後は、琳阿作詞・観阿作曲の曲舞《西国下》の代入である。
 「無俳之伝」とは、俳ナシ、即ち前場の間狂言が登場せず、シテが参籠の夢中のお告げのままに、「告げにまかせて三井寺へ…」と歩み行く形となる。装束付も常の唐織着流し姿ではなく、壺折に女笠の旅中の姿とすることもある。前・後共少し所作も変わるところもある。

天鼓 弄鼓之舞 てんこ ろうこのまい
 中国後漢の時代、王伯、王母夫婦は天から鼓の降る夢を見て子供を得た。そこでこの子を天鼓と名付けたが、やがて本当に天より鼓が降り、天鼓が打つと妙音を発した。皇帝はこの話を聞き、鼓を召し上げようとしたが、天鼓は鼓を惜しみ、山中へ逃げ込んだ。しかし皇帝の力は強く、勅に背いた天鼓はやがて呂水に沈められ、鼓は内裏へ召し上げられた。ところがそれ以後鼓は鳴らなくなった。能はここより始まる。皇帝の勅使が、父親を阿房宮へと召しに来る。罪人の親なので、親までも命を取られるかと案ずるが、皇帝は父親に鼓を打つことを命じる。父親が打つと、親子の情愛が通じた故か、鼓は再び音を発した。皇帝は父親に宝物を与え、天鼓の追善供養を約束する。                               〈中入〉
 呂水の岸で追善供養が始まると、天鼓の霊が水中より現われ、弔いを感謝し、喜んで鼓を打ち舞を舞い、夜明け前に消えてゆく。
 前半は子を失った親の悲しみを描き、後半は楽しげに遊舞をつくす。前半と後半でシテの役が親から子に代わるが、舞台面は無理なくつながる。
 「弄鼓之舞」の小書がつくと、前半、老人が登場してからの一群の謡が省略され、後半、常は入らない太鼓が入り、楽が音色の高い盤渉楽になって一層ノリが良くなる。楽の途中、橋掛へ行き、鼓を見込む型や、替えの拍子など、音楽的な厚みが増す演出となる

出演者紹介
CAST

浅井通昭
Asai Michiaki
日本能楽会会員

茂山千之丞
Shigeyama Sennojo

片山九郎右衛門
Katayama Kurouemon
日本能楽会会員

浦田保浩
Urata Yasuhiro
日本能楽会会員