京都観世会6月例会
Monthly Performances (June)

公演日時:2020/06/28(日・SUN) 13:00~
主催:京都観世会
演目:
(能)賀茂         浦部幸裕
(能)班女 笹之伝     青木道喜
(能)野守 黒頭      大江信行
入場料:
本公演は新型コロナウイルス感染予防ガイドラインに沿った対策を講じる為、入場制限付きの事前申込制をとらせて頂きます。
詳細は、トップページのお知らせをご覧ください。年間会員様には事務局より申込案内を送付致します。

演目解説

賀茂 かも
 播磨国室の明神に仕える神職が、室とご一体であるという都の賀茂明神へ参詣すると、そこへ水汲みの女性が二人現れる。川辺に新しく祭壇が築かれ、白木綿に白羽の矢を立ててあるのを不審に思った神職がその訳を尋ねると、女は「この御矢は当社の御神体とも御神物とも崇め申しているものだ」と答え、乞われるままにこの矢の謂われについて「昔、この賀茂の里に秦の氏女という人があり、朝夕この川辺に出て水を汲み神に手向けていると、ある時川上から白羽の矢が一つ流れ来て水桶に止まったのを、取って帰り家の軒に挿しておくと知らぬうちに妊娠して男の子を産んだ。矢は天に上り鳴神となり、この子は別雷神となり、そしてその母君も神となり、これを賀茂三所の神というのだ」と語る。女は洛中洛外の川の名所を挙げつつ水を汲み神に手向け、やがて自分は神であると言い捨てて神隠れしてしまった。      〈中入〉
 しばらくして女体の御祖神が現れ、つづいて別雷神も出現して雷鳴をとどろかして国土を守護する神威を示すのだった。
 脇能の一つではあるが、前シテが女性であることや、川辺の情趣など他の脇能にはない風情も味わえる曲である。

班女 はんじょ 笹之伝 ささのでん
 吉田少将は都より東国への途次、野上宿で遊女花子と馴れ親しみ、旅の復路に再び会うことを約束し、しるしに扇を交換して東へ下った。以来花子は他の客の座敷へも出ず、扇を眺めて陶然としている。宿の主はたびたび意見をするが従わないので、終に宿から追い出す。                         〈中入〉
 吉田少将は都へ上る途中、再び野上へ寄り花子を訪ねるが、もはや行方知れずとなっていた。そこで道を急ぎ京に帰り、男女の縁を結ぶことで名高い糺の森、下鴨神社に赴く。一方、花子は班女とあだ名され、狂女となって扇を抱いてさすらい、神々に少将との再会を祈誓している。糺の森で少将の従者と出会い、「班女の扇は」との問いに、恋しい人に打ち捨てられたことを秋の扇に例え、中国の故事をひいて恋の切なさをあらわす。やがて少将は花子の持つ扇に気付き、めでたく再会となる。

野守 のもり 黒頭 くろがしら
 出羽国羽黒山の山伏が大峰葛城山へと志し、途中大和国春日の里に着くと、一人の野守の翁と出会う。そこで近くにあった謂われのありそうな池について尋ねると、翁は「これは野守の鏡といって、自分たちのような野守が影を映す水である。本当の野守の鏡とは鬼神の持つ鏡のことで、その鬼神は昼は人となってこの野を守り、夜は鬼となってこの塚に住んだのだ」と答える。さらに「はし鷹の野守の鏡得てしがな思ひ思はず外ながら見ん」という歌はこの池について詠まれたのかと尋ねると、翁は、昔この野で御狩のあった時、御鷹の逃げたのがこの水に映って行方が知れたことから、その歌が詠まれたのだと語る。山伏が真の野守の鏡を見たいというと、翁はこの水鏡を見られよといって塚の中へ消え失せる。               〈中入〉
 山伏がこの奇特を喜んで塚の前で祈ると、鬼神が鏡を持って現れ、天地四方八方を映して見せた後、大地を踏み破って奈落の底に入る。

出演者紹介
CAST

浦部幸裕
Urabe Yukihiro
日本能楽会会員

青木道喜
Aoki Michiyoshi
日本能楽会会員

大江信行
Oe Nobuyuki
日本能楽会会員