京都観世会8月例会
Monthly Performances (August)

公演日時:2020/08/23(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(能)女郎花        吉浪壽晃
(狂言)悪坊        茂山忠三郎
(能)梅枝         河村晴道
(能)殺生石        橋本忠樹
入場料:
本公演は新型コロナウイルス感染予防ガイドラインに沿った対策を講じた公演とさせて頂きます。

※チラシに記載の字幕解説サービスはご利用出来ません。

演目解説

女郎花 おみなめし
 九州松浦潟の僧が上洛する途中、故郷の宇佐八幡と同一体の石清水八幡宮へ参詣しようとして男山の麓に着き、女郎花が美しく咲き乱れているので一本手折ろうとすると、野辺の花守の老翁が現れてそれを咎めるが、古歌を引いての問答により手折ることを許される。日も暮れ、老翁は僧を月下の男山八幡宮社前に案内する。僧が女郎花の謂れを尋ねると、老翁は更に麓の男塚、女塚にも僧を連れて行き、これは小野頼風夫婦の墓であると教え、実は自分がその頼風であると言って消え失せる。 〈中入〉  僧が弔いをすると、頼風夫婦の亡霊が現れる。女はもと都の者で、頼風と契りを交わしたが、通い路の絶えた夫の心を疑って放生川に身を投げた。女の亡骸を土中に埋めると、塚から女郎花が咲き出でたが、頼風と顔を合わせようとしなかった。そして、女を哀れんで川に身を投げた頼風の亡骸を埋めたのが男塚である、と亡霊は語り、今は夫婦共に邪淫の悪鬼に責められている苦患の様を見せ、僧の回向を願うのだった。
梅枝 うめがえ
 廻国中の身延山の旅僧が住吉まで来ると、にわかに村雨に遭い、とある女の庵に泊 めてもらうと、舞楽の太鼓と舞の衣裳とがあった。不審に思った僧が尋ねると、女は 哀れな物語を語りはじめた。――昔宮中の管絃の役を、天王寺の浅間と住吉の富士と いう二人の楽人が争い、役が富士に決まったため、富士は浅間に討たれてしまった。 富士の妻は形見の太鼓を打つことで心を慰めていたが、やがて亡くなってしまった。 ――女は泣きながら僧に回向を頼み、素性は明かさず執心を済けてほしいと言って消 え失せる。                             〈中入〉
 僧が法華経を読誦して回向していると、富士の妻の霊が夫の舞の衣裳姿で現れ、富 士との別れを嘆き、愛着の心を捨てようと、懺悔のために越天楽今様を謡い舞うが、 なおも消し難い恋慕の情と執心の深さを残しながら、夜明けと共に消えてゆくのだっ た。
 生前の富士の妻を描いた《富士太鼓》に対して、妻の霊が主役の《梅枝》は、妻の 夫への燃ゆる恋慕が、世を隔てた追憶の中で淡く沈殿し切なさが深い。なお、《梅枝》 という曲名は〈越天楽今様〉(今様の歌詞雅楽の節で謡う)の詞章からとられている。

殺生石 せっしょうせき
 玄翁という僧が奥州から都へ向かう途中、下野の那須野を通ると、大石の上を飛ぶ 鳥が落ちて来るのを見る。すると女が現れ、石に近づくと命が危ないぞ、という。こ れは鳥羽院に仕えた玉藻の前の執心が変じた殺生石で、生き物を殺すと告げ、玉藻の 前の物語を語る。玉藻の前は容姿端麗、才覚人に優れ、鳥羽院の寵愛を受けた。ある 夜、御殿の灯が消えると、玉藻は身体から光を放ち、それより鳥羽院は病となった。 安倍泰成が占うと玉藻が化生の者であると露見し、王法を傾ける企みがばれた。調伏 を始めると、那須野へ逃れ行き、殺生石となった。女は自らがその石魂であると明か して石に隠れる。                          〈中入〉
 玄翁が石に向かって祈ると、石が二つに割れ、野干(狐)姿の石魂(玉藻前)が現 れ、天竺・唐土での野干の前世や、鳥羽院に遣わされた三浦介・上総介によって射伏 せられたことを、仕方話に語り見せ、終には玄翁の回向を喜び、今よりは悪事を働く 事は無い、と約束して再び石の中に姿を消すのだった。

出演者紹介
CAST

吉浪壽晃
Yoshinami Toshiaki
日本能楽会会員

茂山忠三郎
Shigeyama Tyuzaburo

河村晴道
Kawamura Harumichi
日本能楽会会員

橋本忠樹
Hashimoto Tadaki
日本能楽会会員