京都府次世代等古典芸能普及促進公演

井上定期能 10月公演

公演日時:2020/10/03(土・SAT) 13:00~
主催:井上定期会
演目:
(能)熊野 村雨留       橋本光史
(狂言)延命袋         茂山七五三
(能)鉄輪 早鼓        勝部延和
入場料:
前売券     ¥3,800
当日券     ¥4,500
学生券     ¥2,000
五枚綴券    ¥17,500

演目解説

熊野 ゆや 村雨留 むらさめどめ
 遠江国池田の宿の熊野は母親の病気に、平宗盛に帰国を願い出るが、許されず悩んでいる。そこへ侍女朝顔が母の手紙を携え迎えに来る。熊野は手紙を宗盛に読み聞かせ、帰国を強く望むが宗盛は聞き入れず、気晴らしに清水へ花見に誘う。華やかな春の気色に一人熊野は悲しみに沈む。清水寺に着くと熊野は観世音菩薩に母の無事を祈る。宗盛は酒宴を催し、熊野に舞を舞うよう勧める。熊野は俄に降る村雨に舞を途中で切り上げ、花の散るのを見て心の内を和歌にしたためる。宗盛は心打たれ、哀れに思って熊野の帰国を許す。熊野は観音の御利益と喜び故郷へと帰って行く。
 古来、「熊野松風に米の飯」などと言われ、春の「熊野」、秋の「松風」と人気曲であり、上演頻度の多い演目である。「村雨留」の小書(特殊演出)では、降り出した村雨を理由に舞を途中で止める演出が強調される。

鉄輪 かなわ 早鼓 はやつづみ
 都下京に住む女が、自分を捨て、新しく妻を迎えた夫の不実を恨み、京都洛北、貴船の神に日参し、願をかける。すると待ち構えていた社人が「顔に丹を塗り、身には赤い衣を着、頭には鐵輪をいただき、その三本の足に松明の火を灯して怒れる心をもてば、忽ち鬼となって願いがかなう」という神託を告げる。女は人違いだというが、そういう内にも顔色が変り、つれない人に思い知らそうと足早に去って行く。
 一方男は、近頃夢見が悪いので、陰陽師安倍晴明のもとを訪れ占ってみると、女の恨みで今夜のうちにも命が危ういといわれ、急ぎ祈祷を願う。祭壇を調え、男と新しい妻の人形(ひとがた)を作って晴明が祈ると、悪鬼となった女の霊が現れ、夫の心変わりを責め、後妻の髪をつかんで激しく打ちすえるが、晴明が招いた三十番神に追い立てられ、通力を失って無念ながらに退散する。
 この曲は、女性が男の不実を恨んで、相手の女ともども呪い殺そうとする怨念を描いた異色の作品である。
 小書(特殊演出)「早鼓」では、通常笠を被って登場する前シテ(女)が、衣を被って現われ、中入りする際にはこの衣を脇に抱えて、早鼓の囃子にて走り去る演出となる。