京都府次世代等古典芸能普及促進公演

井上定期能 5月代替公演

公演日時:2020/10/24(土・SAT) 13:00~
主催:井上定期会
演目:
(能)経正 替之型       橋本雅夫
(狂言)二九十八        茂山七五三
(素謡)鵜飼          井上裕久
(能)女郎花          𠮷田潔司
入場料:
前売券     ¥3,800
当日券     ¥4,500
学生券     ¥2,000
五枚綴券    ¥17,500

演目解説

経正 つねまさ 替之型 かえのかた
 御室仁和寺の僧都行慶は、西海の合戦で討死にした平経正を、その生前愛用した琵琶『青山』を手向け弔う。すると夜更けに、幽かな灯火の陰に経正の霊が夢幻のごとく現われ、行慶と言葉を交わす。更に糸竹の手向けをすすめると、経正も琵琶を取り、自ら弾じて楽しみ、夜遊の舞を奏でるが、やがて修羅闘争の時刻がおとずれ、その苦患の様子を見せる。なおも行慶に声をかけられると、その姿を見られるのも恥ずかしいと、灯火を吹き消して暗闇の中に姿を消す。
 多くの修羅能は、前後二場に分かれ、前場で主人公の幽霊が僧に言葉を交わして回向を頼み、後場でありし日の姿を僧の夢の中に現すといった風に構想されているが、本曲は一場物で、主人公の追善法会の場にいきなり経正の霊が現われる。上演時間の短い小品であるが、詞・曲・型ともに洗練され、優雅で詩情溢れる作品といえる。
 小書(特殊演出)「替之型」では、全般に亘り常よりも写実的表現となり、夜遊の優雅さや、苦患の姿を恥じる様子などが強調される。

女郎花 おみなめし
 九州松浦から都に上る旅僧が男山の麓に着き、咲き乱れる女郎花を手折ろうとすると、花守の老人が現われ、古歌などを引いてこれを制する。やがて老人は僧を男山八幡宮へと案内し、男塚・女塚を見せて立ち去る。所の者に男山と女郎花のいわれ、更に小野頼風夫婦の事件のいきさつを聞いた僧が、夜ふけに読経すると、頼風夫婦の霊が現われる。行き違いがもとで妻は放生川へ身を投げ、その死骸を葬った塚から女郎花が生え、後を追って頼風も川に身を投げた様を示し、僧に回向を願う。
 アイ狂言(所の者)によると、事件は、八幡に住む男が訴訟のことで都へ上り、逗留のうちに、都の女と夫婦の契りを交わした。やがて八幡へ帰った男のもとへ都の女が訪れるが、あいにく男は留守で、応対に出た者の態度から、男が心変わりしたかと勘違いした女は悲観のあまり放生川に身を投げた。これを知った男も後を追って身を投げたのだと語られる。悲恋の「花の夫婦」の物語である。