春の素謡と仕舞の会

公演日時:2021/03/14(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(素謡)屋島        林宗一郎
(素謡)弱法師       橋本擴三郎
(素謡)檜垣        梅若実
(素謡)葵上        河村博重
入場料:
一般前売   ¥4,500
一般当日   ¥5,000
学  生   ¥2,500

演目解説

屋島 やしま
 春の讃岐国が舞台、世阿弥作。都の僧が屋島の浦に着き一夜の宿を求めます。漁翁は一度は断りますが、都の人であることを知り宿を貸します。僧に、屋島の源平の合戦の有様を語るよう所望された漁翁は、義経の勇姿や悪七兵衛景清と三保谷四郎の「錣引き」、佐藤継信や菊王丸の討たれた様子などを詳しく語り聞かせます。そのあまりの詳しさを不思議に思った僧が尋ねると、漁翁は自分が義経の霊であるとほのめかし、夢の中で待つよう告げて姿を消します。僧が夢の中で待っていると、源義経の霊が生前の甲冑姿で現れ、波に流された弓を命懸けで取りに行った「弓流し」を語り、ありし日の戦いと修羅の苦しみの様を見せていましたが、春の夜があけるにつれ、いつしかその敵の姿はなく、浦風が吹くばかりでした。
弱法師 よろぼし
 春の彼岸、摂津国の天王寺が舞台。作者は世阿弥の子・観世十郎元雅(ただし曲舞部分は世阿弥作)。かつて人の讒言を信じてわが子・俊徳丸を追放してしまった河内国の高安通俊は、わが子を不憫に思い、現世と来世の安楽を祈るため天王寺で七日間の施行をし、今日が満願の日。そこへやって来た盲目の青年・弱法師は、袖に梅の花が散りかかると仏の慈悲と感謝し、天王寺縁起を語ります。彼がわが子であると気づいた通俊は、夜になってから名乗ろうと、日想(じっそう)観(かん)(日没の方向を見て、極楽浄土を観想すること)を勧めます。弱法師は入り日を拝み、見慣れた難波の景色を心の眼で見渡しますが、盲目ゆえの辛さも垣間見せます。やがて夜も更け、通俊は名を明かし、俊徳丸を伴い高安の里へと帰るのでした。
檜垣 ひがき
 世阿弥作。肥後国(現熊本県)岩戸山の観世音に参籠し既に三年になる僧が、百歳にもなろうかという老女が仏に水を供える為に毎日険しい道のりを通う事を不可解に思い名を尋ねます。老女は後撰集にある「年ふれば我が黒髪も白川の みつはぐむまで老いにけるかな」は、藤原興範に水を請われた折に自分が詠んだ歌であり、自分はかつて大宰府に住んだ白拍子であると明かし、僧に回向を頼み姿を消します。僧が白川を訪ねると、檜垣の女の霊が年老いた姿で現れます。消えぬ執心ゆえに今でも地獄で熱鉄の桶で水を汲み続けているが僧の弔いによって猛火が消えていると喜びます。昔の美しい面影は二度とかえらぬもの、興範に舞を請われた思い出を語り、更なる回向を願うのでした。
葵上 あおいのうえ
 都では、左大臣の息女で光源氏の正妻・葵上が、正体のわからぬ物の怪に憑かれ寝込んでいます。朱雀院に仕える臣下が梓巫女に物の怪を呼び出させると、六条御息所の生霊が破れ車に乗って現れ、かつて賀茂祭で葵上の一行と車争いをしたとき受けた屈辱への恨みと、光源氏の愛を失った憂さを述べます。先の東宮妃として時めいていた自分が、今では日影の身に落ちぶれている・・・。葵上に激しく怨讐をぶつけた御息所は、ついには我を忘れ、葵上を破れ車に乗せてあの世へ連れ去ろうとします。臣下は恐れをなし、従者に命じて横川の小聖という行者を呼び、祈祷を始めます。御息所の生霊が悪鬼と変じて現れますが、ついに祈り伏せられ、やがて怒りを和らげて観念。成仏した身となり去って行くのでした。

出演者紹介
CAST

林宗一郎
Hayashi Soichiro
日本能楽会会員

橋本擴三郎
Hashimoto Kozaburo
日本能楽会会員

梅若実
Umewaka Minoru
日本能楽会会員

河村博重
Kawamura Hiroshige
日本能楽会会員