井上定期能 5月公演

公演日時:2021/05/29(土・SAT) 13:00~
主催:井上定期会
演目:
(能) 班女       浅井通昭
(狂言)附子       茂山忠三郎
(能) 唐船       吉浪壽晃
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500

演目解説

班女 はんじょ (世阿弥作)
 美濃国(岐阜県)野上の宿の遊女花子は、東国へ下る途中に立ち寄った吉田少将と契りをかわして以来、形見に取り交わした扇に眺め入り、勤めに出ようとしない。それを怒った宿の長は、花子を追い出してしまう。帰京の折、再び少将が訪れるが花子は既に追い出されたあとであった。少将は都に着くとすぐ、下賀茂の社へ参詣する。そこへ、少将への恋慕から物狂いとなり、今は班女と呼ばれている花子が現れ、思う人との再会を神に祈る。少将の供の者から狂えとうながされ、花子はその無情さをたしなめつつも、形見の扇を手に狂おしく舞う。やがてその扇に気づいた少将は、自分の持っている扇を取り出し、彼女こそ自分がさがしていた花子であると知り、再会を喜ぶ。
 本曲は、扇のゆかりで統一された作品といえる。曲中花子は、人の心も扇と同じく裏表があり、「おうぎ」は「逢う(あう)」に通じるというのもそら言と歎く。しかし最後には扇が縁で再会を果たす。

唐船 とうせん (作者未詳)
 箱崎の何某のもとに留め置かれている祖慶官人を尋ねて、ソンシ・ソイウという唐人兄弟が船で九州箱崎に着く。二人は箱崎の何某と対面し、祖慶官人を迎えに来た由を告げる。そこへ日本で生まれた子供二人を連れて、祖慶官人が牛を追いつつ帰ってくる。何某は唐子二人を祖慶に引き合わせ、ともに帰国することを許すが、日本子二人は召し使うため、同行を許さない。追風が吹き帰国を急かす唐子と、引き留める日本子との間で苦しみ嘆く祖慶を見て、何某は日本子の乗船を許す。一行は帆を上げて出航し、祖慶は船中で喜びの舞を舞う。
 曲名となる唐船(中国ないし中国風の船)の作り物は、まず橋掛りに出して唐子二人を乗せ、さらに結末の出航に際しては舞台脇正面へと移し、船頭(狂言)の手により帆を上げる。シテ祖慶官人はその舳先にて歓喜に満ちた舞(楽の舞)を舞う。その際、船の作り物には六人が乗っている。本曲には子方を四人必要とするため(そのうち二人はツレにすることもある)、上演頻度も高くない演目である。