春の素謡と仕舞の会

公演日時:2022/03/13(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(素謡)高 砂       大江 信行
(素謡)弱法師       梅若  実
(素謡)千 手       青木 道喜
(素謡)天 鼓       越賀 隆之
入場料:
一般前売   ¥4,500
一般当日   ¥5,000
学  生   ¥2,500

演目解説

高砂 たかさご
 早春の高砂(前場)、住吉(後場)が舞台。世阿弥作。
 九州の阿蘇の神主・友成が京に上る途中、播州高砂の浦に立ち寄ります。そこで出会った老人夫婦に高砂住吉相生の松の謂われを尋ねます。老人は高砂を『万葉集』の時代に例え、住吉を『古今集』の時代に例え、時代を経ても変わらぬ松の葉を、言の葉とかけ、松葉の繁栄こそが言葉の繁栄と説き、和歌の繁栄が平和の象徴であることを教えます。
 松の功徳を語るうち、老夫婦は実は相生の松の精であると明かし、先に住吉に行きお待ちしようと言って舟に乗って沖へ出て行ってしまいます。友成も急いで舟で住吉へ着くと、和歌の神・住吉明神が現れて、神威を顕し泰平の御世を祝福するのでした。

弱法師 よろぼし
 春の彼岸、摂津国の天王寺が舞台。作者は世阿弥の子・観世十郎元雅(ただし曲舞部分は世阿弥作)。かつて人の讒言を信じてわが子・俊徳丸を追放してしまった河内国の高安通俊は、わが子を不憫に思い、現世と来世の安楽を祈るため天王寺で七日間の施行をし、今日が満願の日。そこへやって来た盲目の青年・弱法師は、袖に梅の花が散りかかると仏の慈悲と感謝し、天王寺縁起を語ります。彼がわが子であると気づいた通俊は、夜になってから名乗ろうと、日想(じっそう)観(かん)(日没の方向を見て、極楽浄土を観想すること)を勧めます。弱法師は入り日を拝み、見慣れた難波の景色を心の眼で見渡しますが、盲目ゆえの辛さも垣間見せます。やがて夜も更け、通俊は名を明かし、俊徳丸を伴い高安の里へと帰るのでした。
千手 せんじゅ
 春の夜、鎌倉が舞台です。金春禅竹作。一の谷の合戦で敗れ、鎌倉の狩野介宗茂に預けられていた平重衡。源頼朝はこの平家の御曹子に同情を寄せ、慰めに、手越の宿の長者の娘である白拍子・千手ノ前をつかわします。ある夜、宗茂が重衡に酒を勧めようとするところへ、千手も琵琶・琴を持って訪れます。重衡は千手を通して頼朝に願い出た出家の望みが叶わぬことを告げられ、父清盛の命令ではあったが南都(奈良)の仏寺を焼いた罪業の報いかと悔い嘆きます。千手は、たとえ十悪の身なりとも、浄土へ引摂される由の詩を朗詠し重衡の心を慰めます。重衡が弾く琵琶に、琴を弾き合わせる千手。つかの間の小宴を楽しみますが、翌朝、重衡は勅命によって都へ送り帰されることとなり鎌倉を出立。千手は涙ながらにその姿を見送るのでした。
天鼓 てんこ
 中国後漢の時代、天から鼓の降る夢を見て子供を得た王伯、王母夫婦は、その子を天鼓と名付けます。やがて本当に天より鼓が降り、天鼓が打つと妙音を奏でました。その話を聞いた皇帝は、鼓を召し上げようとしますが鼓を惜しんだ天鼓は逃げます。しかし捕まり呂水に沈められ、鼓は内裏に召し上げられます。その後、鼓は音を出さなくなりました。そこで皇帝は勅使に、悲しみにくれる父王伯を阿房宮に召させ鼓を打つよう命じます。親子の情愛が通じたゆえか、鼓は再び妙音を奏でます。感激した皇帝は王伯に宝物を与え天鼓の供養を約束します。呂水での供養が始まると天鼓の霊が現れ弔いを感謝し、鼓との再会を喜び鼓と戯れます。夜明けとともにその楽しげな姿は消えていきました。

出演者紹介
CAST

大江 信行
Oe Nobuyuki
日本能楽会会員

梅若  実
Umewaka Minoru
日本能楽会会員

青木 道喜
Aoki Michiyoshi
日本能楽会会員

越賀 隆之
Koshika Takayuki
日本能楽会会員