井上定期能 10月公演

公演日時:2022/10/01(土・SAT) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
(解説)         井上 裕久
(能) 巻 絹      勝部 延和
      神楽留
(狂言)太刀奪      茂山千之丞
(能) 藤 戸      橋本 光史
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500
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演目解説

巻 絹 まきぎぬ
 宣旨により、諸国から巻絹を集め、熊野へ納めさせているなか、都からの荷が未着である旨を臣下が告げ、その到着を待つ。いっぽう巻絹を運ぶ都の男は、熊野へ着くと音無天神へ立ち寄り、梅の匂いに誘われて一首を詠み、やがて臣下の所へと到着するが、遅参の咎で縄を掛けられてしまう。そこへ音無天神の乗りうつった巫女が現われ、都の男が詠んだ歌の上の句「音無にかつ咲き初むる梅の花」に続けて、その下の句「匂はざりせば誰か知るべき」と述べ、自ら男の縄を解く。さらに巫女は祝詞を上げ、神楽を舞って物狂いの様を見せるが、いつしか神は去り、本性へと戻る。
 巻絹とは、軸に巻き付けた絹の反物をいう。本曲は、巫女の舞と和歌の徳を讃えている。小書(特殊演出)「神楽留」の際には、巫女の舞『神楽』を三段にて舞い上げ、出立も常の緋大口に白水衣姿を、腰巻に長絹姿に替えることもある。

藤 戸 ふじと
 藤戸の先陣を果たした功により、恩賞として賜わった児島へ佐々木盛綱は従者を伴い着任し、訴訟の申し出を受け付ける。そこへ一人の女が現われ、子を殺された恨みを述べる。はじめは身に覚えがないと言う盛綱も、女の強い訴えに、去年三月、先陣の功を独り占めしようと、馬で渡れる浅瀬を教えた若い漁師を殺害し海に沈めたことを物語る。我が子を返せと激しく迫る母を、盛綱の従者が慰め、私宅へと送り届ける。やがて盛綱が法要を営むと、海上から漁師の霊が現われて恨みを述べ、刺し殺されたさまを再現するが、弔いを受けて成仏する。
 前場、盛綱(ワキ)が語る場面では、盛綱自身の残忍な行為がリアルに語られ、ワキ方の重要な演技とされる。また漁師の母(シテ)が盛綱に強く迫る場面は、盛綱の刀を奪い自害する心であるともいわれ、曲中の焦点となっている。庶民の立場から、支配階級の理不尽さへの反抗を扱った作品として珍しい例である。