夏の素謡と仕舞の会

公演日時:2023/07/09(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
(素謡)通小町       大江又三郎
(素謡)松 風       橋本 雅夫
(素謡)景 清       観世 清和
(素謡)融         杉浦 豊彦
入場料:
    一般前売   ¥4,500
    一般当日   ¥5,000
    学  生   ¥2,500

    ※通信講座受講生、放送大学、老人大学は一般料金です。

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演目解説

通小町 かよいこまち
 八瀬の山里で夏籠りをしている僧のもとへ、毎日木の実や薪を届ける女がいます。不審に思った僧が素性を尋ねると、市原野に住む姥であると答えます。女の言葉の端々から、これは小野小町の幽霊だと確信した僧は、市原野へ行きその跡を弔います。やがて小町の霊が現れ、僧の弔いを謝しますが、それを妨げる者が現れます。昔小町に恋をして百夜通いを約束しますが九十九夜で息絶えた深草少将の幽霊です。僧に乞われるまま、百夜通いの様子を語る少将。かつて小町に諭された「飲酒戒」を守ったことで、最後は小町、少将ともに成仏します。はじめの木の実尽くしの牧歌的な謡と、後半は一転、小町と少将の烈しい恋情と妄執の掛合が聴きどころです。作者不詳、観阿弥・世阿弥が改作。
松風 まつかぜ
 須磨の浦に立ち寄った諸国一見の僧は、磯辺の松が松風・村雨姉妹の旧跡と聞き弔います。日が暮れ塩屋(塩焼き小屋)に宿を借りようと主を待つと、塩汲みの女が二人、帰って来ます。僧が宿を頼むと、女は一度は断りますが、出家と聞き、宿を貸します。僧が先程の松のことを口にすると、女二人が涙するのでその訳を尋ねると、実は二人は「この世に亡き人」、昔この須磨で、在原行平に寵愛を受けた海士乙女、松風・村雨の霊と明かします。二人は行平との恋を語りますが、松風は行平の形見である立烏帽子と狩衣を手に取ると泣き崩れ、やがてそれを身にまとい、狂おしく松に寄り添います。松風が妄執に悩む身の供養を僧に頼み姿を消す頃、夜明けと共に僧の夢は覚め、ただ松に吹く風が残るばかりでした。世阿弥作。(田楽能を観阿弥が改作し、さらに世阿弥が後の段を付け足した。)
景清 かげきよ
 保元の春を誇った平家一門も、時利あらず、義経勢は強く、ついに壇の浦で壊滅し、一門波に沈み、あるいは源氏に捕らえられるが、悪七兵衛景清はいずこともなく姿を消した――。「景清」は、平家諸本が語るこの物語の後日譚です。――源家一統の世は見たくないと、みずから両目を抉った景清には熱田の遊女との間に一人の娘がいました。彼女は父恋しさに、日向のかたほとりまで父をたずねてやって来ます。盲目の景清は今、人々に日向の勾当と呼ばれる琵琶法師となり、村人の憐れみで暮らしていることが恥ずかしく、娘に会うことができません。しかし里人の仲立ちで娘と再会し、娘に請われ屋島源平の合戦での錣引きを語ります。錣引きの戦語りは勇ましく、それに続く娘との別れは悲哀に満ちて謡われます。世阿弥作ともいわれますが、作者不詳。
とおる
 左大臣源融は、小倉百人一首にも歌がみえる貴人です。そして、「融」は、源融が京都六条河原院の広大な敷地に邸宅を作り、尼崎から海水を運ばせ、塩焼き(海水から塩を作ること)を楽しんだという話がもとになっています。 都を訪れた僧が六条河原院に着くと、一人の田子(天秤棒の両端に水桶がついている道具)をもつ老人がやって来ます。そしてここは昔融大臣が塩焼きを真似て楽しんだ邸宅の跡だと教え、潮を汲む有様をみせ、消えてゆきます。やがて僧の夢中に、融の霊が月に照らされ、優美な姿を現します。そして、昔の曲水の宴を偲び舞を舞い、再び月の都へと帰ってゆきます。“月”という言葉が何度も謡われる詩情豊かな名曲です。世阿弥作。

出演者紹介
CAST

大江又三郎
Oe Matasaburo
日本能楽会会員

橋本 雅夫
Hashimoto Masao
日本能楽会会員

観世 清和
Kanze Kiyokazu
日本能楽会会員

杉浦 豊彦
Sugiura Toyohiko
日本能楽会会員