井上定期能12月公演

公演日時:2023/12/02(土・SAT) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
(解説)        井上 裕久
(能) 柏 崎     吉浪 壽晃
(狂言)棒 縛     茂山忠三郎
(能) 阿 漕     橋本擴三郎
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500
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演目解説

柏崎 かしわざき
 所は越後の国(新潟県)柏崎、花若の母は、訴訟の為鎌倉に住む夫、柏崎殿と息子花若の帰郷をひとり待ちわびる。そこへ配下の小太郎が、病死した夫の形見と、出奔した花若からの手紙を携えて帰郷する。母は悲嘆にくれながらも、我が子の安穏を祈る。
 一方、善光寺では、新たに弟子入りした幼い僧、すなわち花若を、住僧が如来堂へ伴う。狂女となった母は、子を尋ねて善光寺へ着き、亡き夫の後生を祈り、その形見の烏帽子、直垂を身に着け、憂いに沈みつつ舞を舞う。やがて住僧は花若を狂女に引き合わせ、母子は再会を果たす。
 悲愁感の濃い本曲の道行は、舞いどころ、謡いどころとして特色を持ち、クセは恋慕、哀傷、釈教の要素を備え、曲の中心をなす。地方色、仏教色の濃い大作で、狂女物中、難曲として扱われる。前シテの唐織姿、後シテ前半の水衣姿、そして物著と、シテは二度扮装を変えることとなる。

阿漕 あこぎ
 九州日向国(宮崎県)の男が伊勢国(三重県)安濃の郡(あののこおり)へ来る。そこへ一人の年老いた漁師が釣竿を肩に現れる。男が尋ねると、老人は、ここが阿漕が浦であると教える。男がこの浦を詠んだ古歌「伊勢の海、阿漕が浦に引く網も、度重なれば顕れにけり」を口ずさむと、漁師も「逢ふ事も、阿漕が浦に引く網も、度重ならば顕れやせん」と別の古歌を詠じる。つづいて男が「阿漕が浦」の名の謂れを尋ねると、老人は、昔からこの浦は、伊勢大神宮の御膳を調える為の網を入れるところであるので、一般には禁漁とされていたが、阿漕という漁師が度々密漁をし、捕えられてこの沖に沈められたことから、ここを阿漕が浦というようになったと語る。やがて夕暮れ方、老人は竿を使ううち、波間に消え失せる。  
 旅人が法華経を読誦して回向をすると、阿漕の亡霊が四手網を持って現れ、密漁の有様と地獄での苦しみを見せ、救いを求めてまた浪間に消えてゆく。
 後場で四手網を用いて演じる立回りの場面が特徴を持つ。すなわち網を仕掛け、魚を追い込み、長い紐をたぐり寄せて網を引き上げる様を示し、漁をする物真似として他に類を見ない。
 また、旅の男を僧とすることもある。