京都観世会11月例会
Regular Performances (November)

公演日時:2024/11/24(日・SUN) 11:00~
主催:京都観世会
演目:
  (能) 実 盛      青木 道喜
  (狂言)薩摩守      野村又三郎
  (能) 玉 鬘      浦部 幸裕
  (能) 安達原      宮本 茂樹
入場料:
一般前売指定席券※WEB        ¥8,500
一般前売自由席券          ¥6,500
一般当日券  (自由席)      ¥7,000
学生券    (2階自由席のみ)   ¥3,000

※通信講座受講生、放送大学、老人大学は一般料金です。

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普通会員様と6回会員様は、会員券1枚につき2,000円の追加料金で
WEBにて事前指定が可能です。
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演目解説

実 盛 さねもり
 遊行上人が加賀国篠原で多くの人達に念仏を勧めていると、毎日怠らず聴聞に来る老人がいた。しかしその姿は上人以外の者には見えないので、不審に思った上人は、名を問う。老人は「思いも寄らぬ事を聞かれた。長生きしてこの称名に出会い、名を捨て念仏の力で極楽世界に生まれかわると喜んでいるのに、上人から名を問われるのは無念だ」と答える。上人がなおも、懺悔が悟りを開くよすがになるから名のってくれ、と言うと、老人は人ばらいを頼み、ついに齋藤別当実盛の幽霊だと名のり池のほとりに姿を消す。                         〈中入〉
 上人が称名をとなえ弔っていると、実盛の霊は古の戦の折の姿で現れる。若やぎ討死せんと黒く染めた髪と髭が、首ごと洗われ、白髪となった事、また、錦の直垂を晴れやかに着た事、手塚と戦い討死した事などを語り、なおも弔いを頼み、幽霊は消えてゆく。
 「軍体」と「老体」を融合し老武者の骨太な気質を、生死の境を軸に密度濃く描く修羅能。老体の能であるが、後場は動きが多く、その多い動きの中に、老武者の心情を見せるので、若い演者には難しいと言われる名曲。「若やぎ討死の心」に「老い」の本質が感じられる。

玉 鬘 たまかづら
 旅の僧が奈良から初瀬詣でに出かけ、初瀬川のほとりにさしかかると、川舟を操る一人の女性が現れる。僧が言葉をかけると、長谷寺へ参るというので、女の案内のもと有名な二本杉を訪ねる。女は僧に「源氏物語」の玉鬘の話をする。昔玉鬘内侍は母である夕顔の死後、筑紫に下って乳母に育てられたが、様々な悲しい出来事の末、ようやく都へと脱出する。しかし都においても頼る者もなく、大和の長谷寺に参詣すると、母の侍女であった右近に再会し、右近が当時仕えていた光源氏に引き取られることになる。女は僧と会う機会を得たのも、ありがたい仏のお導きだと言って玉鬘の回向を頼む。そして自分こそが玉鬘の霊であることをほのめかして消える。〈中入〉
 僧が弔いをなすと、髪を乱した玉鬘の霊が現れて、男たちの様々な物思いの種となった我が身が、死後も妄執の苦しみから抜け出せないと打ち明ける。しかしそれも恥ずかしいことと思い、迷いから覚めて成仏するのであった。
 この曲に登場する長谷寺や石山寺は、当時の観音信仰の聖地であり、具体的な心からの悩みを打ち明けながら祈りを捧げる人たちの拠り所であった。『玉鬘』においては親子に亘って逃れ得ない妄執が『源氏物語』の宿業の主題と響き合って描かれている。

安達原 あだちがはら
 熊野の山伏・阿闍梨祐慶の一行は、回国行脚の途中、陸奥の安達が原にやってきた。日も暮れたので野中の一軒家に宿を求めると、女主人は一旦断るが、たっての願いに一行を招き入れる。祐慶が部屋の隅に置かれた見馴れない物に気づき訊ねると、女主人はこれは枠桛輪(糸つむぎの輪)といい、賎しい女の営む業であると答え、糸車を回しながら浅ましい身の上を嘆き、糸尽くしの歌を歌う。やがて女は焚火をしてもてなそうと、山へ薪を取りに出かけるが、留守に閨の中を決して見ないようにと言い残す。                              〈中入〉
 祐慶の従者が閨の内を覗くと、そこには沢山の死骸が山と積まれていた。さては話に聞いた黒塚の鬼の棲み家であったかと、一行はあわてて逃げ出す。そこへ女が鬼女となって現れ、約束を破ったことを恨み、食い殺そうと迫ってくる。祐慶達は五大尊明王に祈り、終に祈り伏せると、鬼女は凄まじい声を残して夜嵐とともに消え失せる。
 法力による鬼退治の能とも、無常を嘆き、全ての人間に内在する醜い部分を顕されたときの恨みと恥しさの内的ドラマとも捉えることができる曲である。

出演者紹介
CAST

青木 道喜
Aoki Michiyoshi
日本能楽会会員

野村又三郎
Nomura Matasaburo
日本能楽会会員

浦部 幸裕
Urabe Yukihiro
日本能楽会会員

宮本 茂樹
Miyamoto Shigeki
日本能楽会会員