井上定期会設立100年
井上定期能10月公演

公演日時:2025/10/18(土・SAT) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
      (解説)           井上 裕久
    (能) 實 盛      橋本擴三郎
    (狂言)魚説経      茂山あきら
    (能) 花 筐      吉浪 壽晃
          筐之伝
入場料:
    前売券   ¥3,800
    当日券   ¥4,500
    学生券   ¥2,000
    五枚綴券  ¥17,500
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演目解説

實盛 さねもり
 諸国遊行(ゆぎょう)の上人(しょうにん)が、加賀の国篠原(しのわら)で連日説法を行っていると、毎日欠かさず聴聞に来る老人がある。不思議にもその老人は上人以外には見えない。同座の人々は、上人がひとりごとを言っているように思っている。上人は老人に名を尋ねるが、老人はなかなか名乗らない。強いて尋ねると、人を遠ざけた後、二百年余り前、斎藤實盛がここ篠原の合戦で討たれ、その首をこの前の池で洗ったことを話し、自分こそ實盛の亡霊であると明かして消え失せる。上人が實盛の跡を弔うと、實盛の霊が、白髪の老武者姿で現われ、弔いに感謝し、かつて錦の直垂(ひたたれ)を拝領し、髪を墨で黒く染めて出陣したこと、木曽義仲と組もうとして手塚太郎に討ち取られたこと、首実検の様などをもの語り、なおも回向を頼んで消え失せる。
 「朝長(ともなが)」「頼政(よりまさ)」と共に<三修羅>といわれ、また「盛久(もりひさ)」「通盛(みちもり)」と共に<三盛>といわれる。いずれも修羅物の中では難曲とされている。

花筐 はながたみ
 越前の国(福井県)味真野(あぢまの)にいた男大迹(をおあとべ)ノ皇子は、皇位継承の為、急に上洛することとなる。皇子は使者に、寵愛していた照日ノ前(てるひのまえ)のもとへ別れの文と花筐を届けさせる。突然の別れに照日ノ前は形見の花筐を抱いて悲しみの中に我が家へと帰ってゆく。
 その後、皇子は継體(けいてい)天皇となり、大和国(奈良県)玉穂(たまほ)に都を移し、ある日、紅葉狩の御幸に赴く。一方、恋慕のあまり心が乱れた照日ノ前は侍女を伴い都へと旅に出、帝の行列に行き逢う。しかし朝臣に見苦しい狂女とばかり払い退けられ、花筐を打ち落とされてしまう。照日ノ前は、それは帝の花筐であると朝臣を咎め、皇子がまだ味真野にあった時に、毎朝天照大神に花を捧げ世の安寧を祈った謂われを語り、恋のかなわぬ悲しみを嘆く。続いて帝の仰せにより、御車の前で李夫人(り ふじん)の故事を語り舞い、思慕の情を訴える。やがて帝が花筐に気付き、その狂女が照日ノ前であることがわかり、元通り側近く召し使うとの宣旨に、喜んで皇居へと向う。
 恋慕の狂乱を主題とした曲であるが、その相手が時の帝であること、遠国の者とはいえ、自身も侍女を伴っている程であることなど、狂女物の中でも最も品位が感じられる。
 「李夫人の曲舞(くせまい)」は世阿弥の父、観阿弥作といわれ、漢の武帝が愛した李夫人の死を嘆き、甘泉殿(かんせんでん)の壁にその姿を描かせて朝夕それを眺め、また反魂香(はんごんこう)を焚いてその面影を呼び戻したという哀話を曲舞にしたもので、照日ノ前は自らの気持ちと重ねてこれを舞う。