公演日時:2025/12/07(日・SUN) 12:45~
主催:井上定期会
演目:
(お話)「悲しみの女たち」 林 和清
(能) 二人静 𠮷田 篤史
立出之一声 𠮷田 潔司
(狂言)貰 聟 茂山 宗彦
裕久改メ
(一調)杜 若 井上 嘉介
(能) 隅田川 浦部 幸裕
入場料:
前売券 ¥3,800
当日券 ¥4,500
学生券 ¥2,000
五枚綴券 ¥17,500
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演目解説
二人静
正月七日の神事に臨み、吉野勝手の宮の神主は、神前に供える若菜を摘むよう女に命ずる。女が若菜摘に向かうと、一人の里女が呼び止め、吉野の社家の人々に、経を書き、跡を弔ってほしいと、名も名のらず言づてを頼み、もし疑う人があればそのときはあなたに取り憑いて名を名のると言い残して立ち去る。菜摘女が帰ってこのことを神主に報告すると、やがて静御前の霊がのりうつり、かつて着た舞の衣装を着て舞を舞う。いつの間にか静御前の幽霊も現れてともに舞い、討手に追われ吉野山を落ちてゆく義経の悲運を嘆き、弔いを頼み消えてゆく。
「立出之一声」の小書の節は、菜摘女と静御前が両シテの扱いとなり、後場の静御前の霊が現れて、通常クセ以降相舞するところを、霊は橋掛かり一ノ松にて床几にかけ、菜摘女が一人で舞う。その他様々な演出が見られる。
隅田川
都からの旅人が、武蔵国隅田川の渡りに着き、渡し守に舟を乞う。その後から、これも都から我が子の行方を尋ねて下ってきた狂女が着く。狂女の子梅若丸は、人商人にかどわかされて行方知れずとなり、母は狂気となって跡を追い東国隅田川の畔まで辿り着いたのであった。狂女は「名にし負はば いざ言問はん都鳥 我が思ふ人はありやなしやと」という伊勢物語の歌をひいて都鳥に我が子の行方を問う。渡し守はこの狂女を舟に乗せ、去年ここであった話を物語る。それは、人買いに連れられてきた少年が、ここで力尽きて亡くなり、今日はその一周忌に当り、憐れんだ人々が大念仏を催す日であった。なんとこの狂女こそ、その少年の母であった。渡し守にとともに亡き子の塚へ行って念仏を唱えると、子の亡霊が影のように現れ、母と言葉をかわす。しかしそのまぼろしは、夜明けとともに消え失せ、あとには草の生い茂った塚があるだけであった。
母親が子の行方を尋ねる曲は、現行曲に五曲あり、本曲以外の「百萬」「櫻川」「三井寺」「柏崎」は、いずれも子供と再会しめでたく終るが、本曲は遂に生きてめぐり会うことのできない異例の能である。哀傷の中の哀傷といわれ、母の悲しさに満ちた能である。